概要

高安研究室とは

金融システム作成中

ディーラーモデル

金融システム

暴騰・暴落

金融システム 作成中

板情報

金融システム

PUCKとは

ネットワーク 作成中

企業間取引ネットワーク

Web上の口コミ

ソーシャルメディア

購買行動作成中

POSシステム

GPS人流データ

COVID-19感染予測

GPS人流データ作成中

人流モデル

腸内細菌叢作成中

生態系モデル

高安研究室とは

高安研究室では、幅広い分野の現象を統計物理学・統計科学・情報科学の分野で発展している様々な手法を用いて解析しています。 この研究室で行っている研究テーマは、
① 様々な分野で横断的に観測される普遍的な現象のモデリング、および、その特性の解析
② 多数の人間の複雑な相互作用により生じる経済や社会のシステムのデータ解析、および、モデリング
③ 生命科学でみられる複雑なシステムのデータ解析、および、モデリング
などです。 コンピュータが発達した今日、これらの研究テーマは、最先端の情報科学・統計物理学・経済物理学・社会物理学や複雑系科学の分野で注目されているトピックです。 ビッグデータの時代の到来とともに、人間社会においては、ミクロな構成要素である人間や企業の活動及びその相互作用や時間発展が精度よく観測できるようになってきました。 また、コンピュータの性能向上や統計科学・情報科学の発展で大規模なデータが解析可能となり、ミクロな構成要素が、マクロな現象にどのように影響を与えているのかを調べ、ミクロ(構成要素)とマクロ(現象)の関係性の視点からのモデリングが可能となってきました。 このようにミクロとマクロの視点から見ると、人間社会のデータや生物系のデータは新たな発見の宝庫です。 高安研究室ではこのような複雑な現象の解明に最先端の知見を創造しながら挑みます。

「超スマート社会に必要な研究分野の開拓に挑む」

一般に研究対象が実証科学として広く受け入れられるためには、精密で十分な観測データが得られること、再現性のある解析結果が得られることが大前提になります。 超スマート社会では、ビッグデータの蓄積により人間や社会・経済に対する精密な観測が可能となり、新たな科学領域が生まれつつあります。 国や地域が違っても、同じような結果を得るという普遍的な人間の振る舞いもたくさん報告されています。膨大な人間や社会のデータの解析から、新しい科学が誕生しています。

科学の発展は、その時代の社会的ニーズに答えるように発展してきたという歴史があります。 科学者の好奇心や発見と産業界のニーズが一致したとき、新しい分野が大きく発展します。 たとえば、17世紀の大航海時代には船の位置の測定(天測)に必要だった惑星運動に関する研究が進み古典力学へと発展しました。 18世紀の熱機関が発明され、熱や温度に関する研究が進み、熱力学が発展しました。 19世紀にはモーター・電話などが発明され電磁気学が発展しました。 20世紀初頭には製鉄技術が国を支えていましたが、高炉の温度を測定する問題から量子力学が誕生しました。 そして原子が発見され、 統計物理学の基盤が確立されました。 その時代時代の社会のニーズに敏感であることも新しい科学分野の発展には欠かすことのできない重要な要素なのです。

それでは、超スマート社会においてどのような研究分野が新たな科学として発展するのでしょうか? 精密な観測が可能となり、なおかつ、社会のニーズがあるという条件を満たすことが重要です。

このような分野を考えるにあたって、20世紀末に大きく発達した高度な情報技術がもたらしたインフラの整備を無視することはできません。 世界中が巨大な情報ネットワークで結ばれ、スマホやタブレットにより、1人1人がリアルタイムで情報通信可能となり、情報が氾濫する情報爆発の時代を迎えたのです。 これにより大きく様相を変えたのが経済活動や人々の生活です。 経済活動は、インターネットを利用したネットバンキング、PoSシステム、電子マネー、コンピュータトレーディングに象徴されるように、経済活動には広くコンピュータシステムが導入され、世界の経済活動は高速化・複雑化し、金融市場などの連動性も高速化しています。また、日々の生活では、一人一人がSNSや動画サイトなどを利用して、世界中の人と繋がり、情報発信ができる社会になりました。スマホやタブレットと連動したスマート家電、車の自動運転などは実装されつつあります。このような時代において、安定した社会生活を維持するためには、人間の活動の膨大な記録であるビッグデータを多角的に高速に分析し、利活用することが不可欠となっています (経済物理学・社会物理学の研究)。

私たちの日常生活のコミュニケーション手段が大きく変化したことにより、情報の“量”“質”が新たな社会問題になっています。 情報の量に関する問題としては、インターネットの規模の拡大によるネットワーク構造の複雑化と利用するデータ量の増加や災害時に発生する通信効率低下の問題などです。 巨大な自律分散システムにおいて、どのような通信制御方法を用いればもっともシステムが頑強になり、輸送効率が高くなるかという研究は、情報通信システムの構築に関わる重要な基礎研究テーマです。 さらに、将来、脳という神経細胞の巨大ネットワークにおいて、どのように膨大な情報が通信されているかという問題の解明と密接にかかわってくることが期待されます (自律分散システムにおける輸送システムの研究)。 情報の質に関しては、WEB上で無造作にどんどん氾濫していく情報からいかに有意義な情報を見出すかという問題があります。 この情報の質に関しては、人間の集団心理としてどのようにデマや流行が形成されるかなど、新たな普遍的な人間の行動に関する法則性が見えてくる画期的な分野に発展しています (SNS情報の解析)。

「学際分野の発展と新分野の開拓」

今、最先端では既存の学問の境界線が不明確になっています。 ものごとの性質や現象を解明するには多角的な研究(学際的研究)が必要であることが認識されてきたからです。私たちの研究も例外ではありません。 高安研究室は、先端的な情報科学・統計科学のビッグデータ解析の基盤と統計物理学・複雑系科学・システム科学のモデリング手法と経済学・社会学などの知見を融合させた経済物理学・社会物理学とよばれる学際分野を開拓してきました。 人間活動の複雑な相互作用がもたらす社会現象や経済現象の解明に物質科学の知見が有用であることが分かってきたからです。 個々の人間の振る舞いは、個性がもたらす多様性が観測されます。 しかし、その集団的振る舞いには、普遍的な法則があることがビッグデータを解析することによりわかってきたからです。

特に個々の構成要素(ミクロ)の性質がわかったとして、たくさんの構成要素が複雑に相互作用するシステム全体(マクロ)としての性質を観測したとき、自明でない現象が検出されるような対象の研究は、統計物理学の分野で盛んに行われています。 統計物理学は、気体分子1つ1つの運動から、たくさんの分子からなるマクロな系で満たされる気体の状態方程式を導出することに成功し、発展した研究分野で、物質における相転移自己組織臨界現象の定式化と解明が進められてきました。現在では、その概念を拡張し、研究対象を生物・情報・経済・社会の現象へと拡大してきました (基本数理モデルの構築と解析)。 たとえば、生物物理学などは、大きく発展している学際分野の1つです。 先に述べたミクロとマクロという概念から述べると、たとえば、1つ1つの神経細胞は脳という巨大な神経細胞のネットワークを構成するミクロということになります。 ミクロを構成する神経細胞の電気生理学的な特質は詳細にわかるようになってきましたが、それが複雑にネットワークを作ることによって創出される思考・感情といったマクロである脳の高次な機能についての解明は、まだ研究が始まったばかりです。 また、経済現象や社会現象においては、構成するミクロは人間1人1人です。 その1人1人の行動が互いに影響を与えることによって、多くの人間の集団行動が現象として観測されます。 多数の人間の複雑な相互作用を解明しようとする経済物理学・社会物理学の研究もコンピュータの発展により進歩した破壊現象や凝集現象のような非平衡開放系の統計物理学の先端的研究と深く関わっています (経済物理学・社会物理学の研究)。

「研究テーマの具体例」

check 基本数理モデルの構築と解析

時空間の自己相似パターンやベキ分布に着目し、その生成メカニズムを数理モデルで理解する研究です。

  1. ランダム乗算過程とベキ分布に関する研究
    Physical Review Letters 1997, Journal of Statistical Physics 2014, Entropy 2017, Entropy 2021
  2. 自己変調過程と長時間相関の研究
    Physica A 2003
  3. 複雑ネットワーク上での非線形な輸送現象と拡散・凝集転移の研究
    International Journal of Modern Physics 2012, Pnysical Review E 2015
  4. 複雑ネットワークの形成モデルの研究
    Physical Review Letters 2012, Journal of Statistical Mechanics 2017
  5. 複雑ネットワーク上での相転移の研研究
    Scientific Reports 2018, Journal of Statistical Physics 2022
  6. 目的変数に対して、沢山の説明変数から重要な説明変数を抽出する方法の研究
    Entropy 2018
  7. 時系列の変化点を検出する方法の研究
    Scientific Reports 2022
  8. 時系列のトレンド分解の方法の研究
    PloS One 2020
  9. 高次元ビッグデータから、ある条件のもとで高密度に集積している領域を抽出する方法の研究
    Entropy 2023

check 経済物理学・社会物理学の研究

経済物理学・社会物理学の分野は1990年代ころに、統計物理学の研究者たちが当時利用できるようになったばかりの金融市場価格の電子データを解析することから始まりました。 経済物理学・社会物理学はデータに基づき、たくさんの人間や企業や国家などの相互作用により生じる経済や社会の現象を解明する研究分野です。経済や人間社会のビッグデータを解析しその統計的性質や変数間の関係性などの特性を明らかにします。最もシンプルなモデルで、観測されたシステムの特質を再現するデータドリブンなモデルを構築します。 そして、モデルの妥当性を検証した後、予測やシステムの脆弱性の解明などモデルを用いた応用的な研究を行います。

経済物理学・社会物理学の具体的なテーマについては、現在下記のように想定しています。

【金融市場に関する研究】
ブラウン運動をはじめ、ランダムウォークの研究は、20世紀初頭には原子の発見につながり、統計物理学の方でも関心の高いトピックです。 ブラウン運動は、原子の発見でそのなぞが解明されましたが、金融市場のランダムウォークの根源としては、どんな人間の行動がその本質なのか?ランダムウォークから乖離するのは、どのようなときか?そのような科学的な好奇心に答えを見いだそうと分野が大きく発展しました。株や為替などの金融市場における市場価格の秒単位(現在ではミリ秒単位)の時系列データを様々な手法で解析することによって、ランダムウォークから乖離したたくさんの性質が発見されています。経済物理学では、市場の不安定性を生み出す動的な効果を膨大なデータから帰納的に導出し、なぜ、どのようにして変動が生じるのかという根本的な問題にさかのぼって現象を解明します。 研究テーマは以下のように5つから構成されています。

  1. 金融市場の市場価格変動の解析とモデル化
    研究室では、独自のモデルを開発しています(Potentials of Unbalanced Complex Kinetics(PUCK)モデル)。このモデルでは、ポテンシャルの中のランダムウォークを定式化したモデルで、ランダムウォークから加速度をもつ冒頭・暴落などが再現できます。また、モデルのパラメータと、ディーラモデルのパラメータの関係性なども解析されています。また、時間の繰り込みを適用することにより、冒頭・暴落・インフレーションなどで知られている指数関数や2重指数関数を導出することができます。モデルのパラメータは、粒子フィルタなどを用いて、逐次推定することができます。
    Pysica A 2006, Progress of Theoretical Physics 2009, Physical Review E 2009, Journal of Statistical Computation and Simulation 2014, Journal of Statistical Mechanics 2019, 「計算と社会(岩波講座 計算科学 第6巻)第2章」, Physics Reports 2022
  2. 板情報の解析とモデル化
    板情報という金融市場の参加者がどの価格でどのくらいの量の売り注文、買い注文をいれたかの取引情報の解析を行い、市場価格の不安定性の要因を抽出する研究。
    Physical Review Letters 2014, Physical Review E 2015, Physical Review Letters 2018, Physical Review E 2018, PloS One 2018, PloS One 2019
  3. ディーラモデルの研究
    金融市場価格の動的な振る舞いをミクロ構成要素であるディーラ(市場参加者)たちの戦略と関連付け、マクロな現象として観測される冒頭・暴落などのメカニズムを探 る研究。戦略の多様性と冒頭・暴落の関係性のシミュレーション、為替市場の介入シミュレーションなどの研究。
    Physical Review E 2009,人工知能学会論文誌2012, Physical Review E 2018, Physical Review Letters 2018, Journal of Statistical Physics 2023
  4. 多市場間の相互作用の研究
    金融市場では電子取引により高速に売買ができるようになりましたが、金融市場価格の暴落は、他の市場に連動し、伝播することが知られています。 たとえば、為替市場では、一つの通貨から発生した暴落が伝播し、多通貨の暴落を引き起こす通貨危機などが知られています。
    Physica A 2006, PloS One 2020
  5. 板情報のデータからランダムな揺らぎの根源にせまる研究
    市場価格の変動を生む揺動や変動を止める散逸が市場参加者のどのような売買行動から生じているのか、板情報を解析して理解を深める研究。
    Physical Review Letters 2014. Physical Review E 2015, Physical Review Letters 2018

【企業情報の解析とモデル化】
企業の財務データと取引関係のデータを解析することにより、様々な業種の様々な規模の企業の創業から倒産までのライフサイクルをモデル化することが可能となってきました。 新たに起業した会社がどのような企業と取引を開始するのか解析すると、すでに取引数の多い企業と取引を開始する傾向があることがわかり、大きいものがより大きくなるメカニズム(優先的選択)があることがわかっています。 このようなメカニズムは、人と人のつながりの研究(複雑ネットワーク)でSNSなどのフォロワー数の分布が不平等なベキ分布になる仕組みとしても有名ですが、もともとは、物理学の結晶成長で発見された法則です。 さらに、企業間取引ネットワークは大規模な複雑ネットワークであることが知られています。そのネットワーク構造上でのおカネやモノ・サービスの流れを観測し、その流れをモデル化することで、災害時の売上被災額などを推定できるようになっています。

  1. 企業間取引ネットワークの特性の研究
    企業間取引ネットワークは大規模な複雑ネットワークとして知られています。そのネットワークの特性の解析、および、頑強性の解析(パーコレーションなど)は、サプライチェーンの維持と発展に重要な科学となります。
    Annual Report of the Earth Simulator Center2007, Scientific Reports 2017, Physical Review E 2015, PloS One 2015
  2. 企業間取引ネットワーク上の輸送現象のモデル化
    取引ネットワーク上で隣接する企業同士がどのくらいの額の取引をしているのかが観測できるようになり、おカネの流れの輸送方程式がデータドリブンに導出されています(重力相互作用モデル)。 このモデルと現実のネットワーク情報を組み合わせると、企業の売上が正しく推定できるように4つのモデルパラメータをデータ同化します。そのモデルを用いて、大企業の倒産の影響力や災害時の売り上げ被災額をすいていすることができます。
    International Journal of Modern Physics 2012, Artificial Life and Robotics 2019
  3. 企業間取引ネットワークの時間発展モデル
    企業間取引ネットワークの時間発展を観測することができます。新規参入(創業)した企業がネットワークのどういう規模の企業と取引を開始するのか、どのような企業が合併や分社するのか、どのような企業が倒産するのかを調べることにより、企業取引ネットワークの時間発展シミュレーションが行えるようになってきました。 重力相互作用モデルと組み合わせて併用することにより、企業の売上の分布、企業の成長率の分布、企業の寿命の分布、売り上げと取引相手数のスケーリング関係、企業の取引相手数の企業年齢に伴う変化など、多くの統計的性質が再現できるようになりました。この研究は、国が企業にある政策を提案したときにシミュレーションによってその政策効果が評価ができるEvidence Based Policy Makingのよい事例となる研究が目標です。
  4. 企業のライフサイクルの研究
    企業のパラメータとして、売上、従業員数、取引相手数の3変数は、互いにきれいなベキ乗のスケーリング関係を満たしていることが知られています。 これらの3変数で張られた位相空間おいて、企業が年齢とともにどちらの方法に進みやすいかというフローダイヤグラムを記述すると、安定な企業は、そのスケーリング線の近傍に集まっており、スケーリング線から外れると倒産しやすい性質があることがわかりました。
    New Journal of Physics 2019, Entropy 2021, Physical Review E 2022
  5. 企業データの解析手法の提案
    企業の財務データや取引ネットワークの情報から、倒産、連鎖倒産や急成長に重要なパラメータを抽出bする手法の開発
    Entropy 2023
  6. 【ソーシャルメディアに関する研究】
    ブログやTwitterなどに代表されるソーシャルメディアは、インターネットを通して誰もが情報を発信・共有・拡散することができるサービスで、世界的に利用が進んでいます。 ソーシャルメディアに書き込まれた情報は保存されており、匿名化などのプライバシーポリシーを保護するような処理をしたうえで、学術研究に活用されています。 ひとつひとつの書き込みは、個人的な興味や井戸端会議的なおしゃべりのような内容の記事も多いのですが、数千万人というユーザー数になると、日々の書き込み記事の中の単語の出現頻度などからマクロ的な自明でない特性をいろいろと見つけることができます。 次のような研究を進めています。
    Phys Rev E 2013, 「ソーシャルメディアの経済物理学」日本評論社2012,

    1. 国民感情の定量的検出に関する研究
      単語の中には怒りや喜びなどの感情に関連したものがあり、ソーシャルメディアに書き込まれた記事の中の単語の分布から国民全体の感情を定量評価する手法を開発しました。 どういうイベントによって国民の感情がどのように変化するのかを観測することができます。2020年初頭のCovid19no発生から、その後のパンデミック、政府による行動制限の発令、ワクチン接種などによって国民の感情がどのよう変化したかを詳細に分析しています。
      PloS One 2019, Scientific Reports 2022
    2. フェイクニュースの伝播に関する研究
      ユーザーひとりひとりをノードとみなし、フォロー関係をリンクとすることで情報の拡散の様子をネットワーク構造上の拡散モデルによって記述することができます。 正しい情報の伝播の仕方と誤情報の伝播の仕方にはネットワークの構造に違いがあることを私達は発見しました。また、ソーシャルメディア中の情報の拡散の様子は、接触によって伝播する感染症の基本的な数理モデルをネットワーク上に適用することによってシミュレートできます。
      PloS One 2015, Euro Physics Journal Data Science 2020
    3. ハッシュタグの利用頻度に関する研究
      TwitterやWeiboなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)では、ハッシュタグをコメントの目印に使っていますが、ハッシュタグの生成・増加・減衰・消滅の様子を観測すると、普遍的な特性があることがわかってきています。個人が発信した情報がどのように広がっていくのか記述するモデル構築を進めています。

    【小売りデータに関する研究】
    コンビニやスーパーマーケットの商品にはバーコードが付いており、POSシステムによって販売価格や数量が自動的に記録されます。そのような小売りのデータを分析することで販売数の予測を精密化することができます。

    1. 販売数のゆらぎの法則に関する研究
      販売数の平均値が小さい商品が売れる事象はポアソン過程で近似でき、販売数の分散は平均値に比例しますが、ある程度以上販売数の平均値が大きい商品の場合には分散が平均値の2乗に比例するなどポアソン過程より大きなゆらぎを伴うことがわかっています。様々な商品の販売データを分析し、ゆらぎの特性の解明を進めます。
      PloS One 2016
    2. 商品ごとの販売数の予測に関する研究
      上記のようなゆらぎの特性を踏まえた上で、粒子フィルタなどの手法を用いて急激な販売数の変化にも対応できるような販売数予測の数理モデルを構築します。
      Stats 2019
    3. 廃棄を減らし利益を上げる戦略に関する研究
      売れ残りによる廃棄の量を減らすように生産を控えると機会損失で利益を減らす可能性が高くなります。どのようにすれば廃棄を減らし、そのうえで利益を上げることができるのか、数理モデルを駆使して最適な方法を探索します。
      Sustainability 2019
    4. 商品生態系に関する研究
      コンビニの店舗には数千種の商品が常時並べられていますが、毎日何種類かが入れ替わる形で準定常的な状態が維持されています。生態系の視点から商品全体の時間的な変動を分析し、数理モデルを構築します。
      Entropy 2020
    5. 【GPSデータに関する研究】
      スマートフォンのGPSデータが学術研究にも使われるようになり、人々の移動の様子が観測できるようになりました。研究室には、国内約100万人のユーザーの位置が10分程度の間隔で記録された膨大なデータが数年間分保管してあります。どこからどこにどれくらいの人が移動しているのか、朝夕のラッシュのパターンやコロナ禍での人流の変化などを定量的に計測することができます。このデータに関する研究は次のようなものがあります。

      1. 都市圏における人流パターンの研究
        都市圏を1kmメッシュに分割しそれぞれのメッシュの中の平均流を計算することで人流の流域を観測することができます。朝、昼、夕で流域の形や分布がどのように変わるのかデータに基づいて分析し数理モデル化します。
        Scientific Reports 2020
      2. 電気回路モデルによる都市圏の人流のモデル化に関する研究
        動いている人を荷電粒子と見做すことで各時刻における電流の空間分布が計算できます。この電流分布を記述する仮想的な電気回路モデルを想定し、人流の変化を電気ポテンシャルの変化で表現します。
        Scientific Report 2022
      3. 人流の重力モデルに関する研究
        都市間の人流を特徴づける重力モデル(人流は都市人口の積に比例し、距離のベキ乗に逆比例する)は以前から知られています。都市内部の人流にも適用できるようにモデルを拡張する研究を進めています。
      4. GPSデータに基づくCovid19感染者数の推定
        感染症は人の接触によって拡散するので、GPSデータから人の密度を推定することで感染の可能性を定量的に評価することができ、それに基づいて、都市圏での感染予測をすることが可能となります。
        Scientific Reports 2022

      5. これらのほかにも、膨大な高頻度データを扱う全ての現象を研究対象とします。

check自律分散システムにおける輸送システムの研究

インターネットは情報を電子的輸送する巨大な自律分散システムです。 そのような巨大システムにおいて、情報流を測定するとパケットの密度ゆらぎにパワースペクトルが1/fに従うようなゆらぎが観測されることがわかってきました。 そのような現象の背後には、単位時間あたりのパケットの流れをコントロールパラメータとする、渋滞相と非渋滞層の間の動的な相転移現象が起こっていることを解明しました。 さらに、インターネットのプロトコルを詳細に解明し、システムで最も効率的な輸送が実現するのが臨界点であることを示しました (臨界点制御)。

インターネットが人工的につくられた世界最大の情報輸送システムであるならば、私たちの脳は、自然界が生み出したまさに奇跡ともいうべき高速で大規模な情報処理を行うシステムです。 神経細胞の特質は詳細にわかるようになってきましたが、神経細胞が複雑にネットワークを作ることによって創出される思考・感情といった脳の高度な機能についての解明は、まだ始まったばかりです。 そのような生命情報システムから生じる機能の研究は複雑系科学の理解が深まるにつれて、さらに発展することが期待される分野です。

  1. インターネットの輻輳現象に関する研究
  2. 生命情報システムの研究